会社の解散と清算の説明
さまざまな事情により、会社の解散や清算を検討されている経営者の方はまず私の話を聞いてください。 「倒産」「破産」「解散」「清算」はしようと思えばいつでもできますが、特に「破産」は数百万円のお金がいります。 経営者の方にとっては一生に一度もあってはいけない事件なので最善の対処が期待されますが、通常は顧問税理士や顧問会計士は毎年の税金計算が専門なので、そういった特殊な場面で気の利いたアドバイスは期待できません。
「企業再生」「銀行交渉」「M&A]「スキーム型事業再編」など、大企業だけが利用できる特殊な方法と思われがちですが、すぎのかいけいのお客さまは、それまでの顧問税理士・会計士に経営破たんを宣告された中小企業が多いのです。思い切ってすぎのかいけいに相談してみてください。
弁護士さんに相談したら間違いなく「破産」をすすめられます。適当な専門家に相談したら「粉飾決算」をすすめられます。 そうやって中小企業はどんどん消滅していくのです。経営者のみなさんの生活もありますが、従業員さんの生活もかかっているのです。厳しいことも言いますが、一緒に会社を立て直しましょう。
解散・清算の法務手続き
1.破産手続開始の決定
(2)解散の効果
会社が解散すると、会社は営業活動ができなくなり、その財産の整理を行う範囲内(清算の範囲内)でのみ存続します。
また、営業活動をするための会社の機関である、取締役、代表取締役はその存在を失い、以降は清算人がこれに代わって清算の事務を処理することとなります。
(3)解散時の定款変更
- (機関)株主総会と清算人
- (株式の譲渡制限)代表清算人の承認
- (定時株主総会)解散日より2ヶ月以内
- (定時株主総会基準日)解散日
- (総会の議長)代表清算人
- (取締役の員数)清算人○人以上
- (取締役の任期)削除
- (代表取締役)代表清算人
- (取締役会)削除
- (報酬)清算人の報酬
- (監査役)削除(但し、公開会社の場合は必要)
- (事業年度)清算事務年度は毎年解散日を終了日とする一ヵ年とする。
会社清算とは
(1)清算の意味
清算とは、会社の解散に伴いそれまでの法律的・経済的関係を整理する手続きをいう。
- 現務の結了
- 債権の取立て(回収)
- 財産の換価処分
- 債務の弁済
- 残余財産の分配
(2)清算中の会社ができないこと
- 営業活動(売掛金の回収はOK)
- 資金調達活動
- 自己株式の取得(無償で取得する場合その他一定の場合を除く)
- 資本金の額その他貸借対照表上の計数の変更
- 剰余金の分配(配当)
- 吸収合併の存続会社または吸収分割の承継会社になること
- 株式交換または株式移転
(3)清算の種類
任意清算 |
定款の定めや総社員の同意によって会社財産を自由に処分できる方法で、合名会社や合資会社にのみ認められる。 |
|
---|---|---|
法定清算 |
法律上定められた手続きによって財産整理を進める方法で、株式会社はすべて法的清算によらねばならない。 |
|
通常清算 |
清算手続きが裁判所の監督外で進められる私的処理 |
|
特別清算 |
清算手続きが裁判所の監督下で進められる方法。 |
|
(例)親会社が債務超過の子会社を整理する場合、子会社負債を親会社が肩代りしたり、事前貸付したりすると寄付金課税の問題が生じやすいが、特別清算は裁判所の監督下で行われるので客観性を確保しやすい。 |
(4)会社解散から清算までの流れ
期日 | 法定手続き | 税務上の手続き | 備考 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
総会の2週間前 | ・取締役会決議
・株主総会の召集通知の発送 |
取締役会非設置会社は取締役が発送 | |||||||
株主総会日=解散日 | 株主総会の特別決議
|
※解散日が新しい事業年度末となるため従来の決算日に合わせると決算事務が軽減される) | ・解散決議
・精算人の選任決議(1人以上) (総会決議をしなければ取締役が全員清算人となる=法定清算人) ・定款変更決議 ・役員退職慰労金支給決議 公開会社はは監査役を設置する必要アリ) |
||||||
総会当日 | 清算人会(任意) | 清算人会を設置する場合は3人以上
代表清算人は通常は代表取締役 |
|||||||
解散日から2週間以内 | 解散登記および清算人の登記 | ・解散株主総会議事録
・定款(原本証明) ・精算人・代表清算人就任承諾 ・印鑑届出書 |
|||||||
解散日から2ヶ月以内 | 債権届出の公告、知れたる債権者への通知 |
|
|||||||
解散日後遅滞なく | 株主総会の普通決議 | 所轄税務署へ「会社解散届け」の提出 | 解散時の財産目録、貸借対照表の承認 | ||||||
解散日後2ヶ月以内
(期限延長特例あり) |
「解散確定申告書」の提出
(期首から解散日までの解散事業年度) |
「登記事項証明書」添付 | |||||||
解散日翌日から一年後 | (清算事務年度終了日) | ||||||||
清算事務年度終了日から2ヶ月以内 | 株主総会 | 貸借対照表(承認)
事務報告(報告) 附属明細書 |
|||||||
清算事務年度終了日より2ヶ月以内
(期限延長特例あり)) |
株主総会 | 清算事業年度の確定申告書の提出 | 貸借対照表
損益計算書 株主資本等変動計算書 |
||||||
残余財産確定日 | 代表清算人が決定 | 財産を現金化して、事後的費用以外の債務の弁済の見込みがついた日
(現物分配も可) 債務超過会社の場合は弁済不能債務全額の債務免除を受けた日 |
|||||||
残余財産の分配 | 配当通知書の発行 | みなし配当が生じる場合は「配当通知書」の発行 | |||||||
清算結了日 | 株主総会の承認 | 決算報告=清算結了日
全財産を現金化し債務の弁済を完了(=残余財産の時価額確定) |
|||||||
株主総会後2週間以内 | 清算結了登記 | ||||||||
残余財産確定日より1ヶ月以内
(その期間内に残余財産の 最終の分配が行われる場合には、 その最終分配日の前日まで) |
残余財産確定事業年度の確定申告書
「清算結了届」の提出(国、地方) |
登記事項証明書 | |||||||
清算登記後遅滞なく | 裁判所へ「書類保存者選任申請書」の提出 | 清算人が書類保存者の場合は不要 | |||||||
残余財産確定日以降清算結了日までの期間については申告する必要なし | |||||||||
最低2ヵ月半は必要 |
会社解散の会計
(1)解散事業年度の計算書類
当初の事業年度開始の日から解散日まで | |||
---|---|---|---|
会社法上 | 税務署用 | ||
清算貸借対照表 | 時価評価(処分価額) | 貸借対照表 | 取得原価主義 |
損益計算書 | 発生主義 | ||
株主資本等変動計算書 | |||
財産目録 | 時価評価 |
(2)会社法上の財産目録・貸借対照表
(資産の部) | |
---|---|
預金 | 解散日までの経過利息を未収入金に計上する |
売上債権 | 個別債権残高から貸倒見積額をと取立費用見込み額を控除した額 |
貸付金 | 個別債権残高から貸倒見積額をと取立費用を控除した額
解散日までの経過利息を未収入金に計上する |
棚卸資産 | 売却可能価額から処分費用を控除した価額 |
有価証券 | 時価(処分可能価額)から売却費用(処分費用)を控除した価額 |
前払費用・仮払金 | 現金回収が見込まれる部分は未収入金
費用性のものはゼロ評価 |
土地(借地権含む) | 実際の処分可能価額から処分費用を控除した価額
建物を取り壊す必要がある場合はその取り壊し費用も控除 |
その他有形固定資産 | 実際の処分可能価額から処分費用を控除した価額 |
リース資産 | リース契約解除により取得する固定資産の実際の処分可能価額から処分費用を控除した価額 |
無形固定資産 | 実際の処分可能価額から処分費用を控除した価額
通常は全額ゼロ評価 |
繰延資産 | 現金回収が見込まれる部分は未収入金
費用性のものはゼロ評価 |
投資等 | 実際の処分可能価額から処分費用を控除した価額 |
(負債の部) | |
仕入債務他 | 簿外債務も含める |
リース債務 | リース契約解除に伴う違約金を未払金に計上する |
未払金 | 確定債務だけでなく、清算結了までに要する事後費用を見積もって計上する |
未払税金 | 清算結了までの消費税、法人税、地方税を見積もり計上する |
借入金 | 解散日までの経過利息を未払金に計上 |
退職給付引当金 | 解散日現在での会社都合による要支給額を未払金に計上 |
偶発債務 | ・割引手形は両建て経理
・保証債務についてはその履行が確実に見込まれる場合は履行額を未払計上 |
正味財産の部 | |
「清算換価剰余金」で一本表示する |
清算年度中の会計
(1)清算事務年度の計算書類
解散日の翌日から1年間 | |||
---|---|---|---|
会社法上 | 税務署用 | ||
貸借対照表 | 時価評価(処分価額) | 貸借対照表 | 取得原価主義 |
事務報告 | 収支の状況 | 損益計算書 | 発生主義 |
株主資本等変動計算書 | |||
財産目録 | 時価評価 |
(2)会社法上の事務報告
1.収支の状況 | |||
---|---|---|---|
(1)収入 | |||
①債権の取立て | |||
②資産の処分 | |||
③その他 | |||
(2)支出 | |||
①債務の弁済 | |||
②清算費用 | |||
(3)収支差額 | |||
2.清算事務の今後の見通し | 何が問題でいつごろ終了する見通しなのか | ||
3.その他 | 営業所の廃止
臨時株主総会の開催等 |
最終事業年度の会計・税務
(1)残余財産確定事業年度の計算書類
清算事務年度の翌日から残余財産確定日まで | |||
---|---|---|---|
会社法上 | 税務署用 | ||
貸借対照表 | 取得原価主義 | ||
決算事務報告 | 収支の状況 | 損益計算書 | 発生主義 |
株主資本等変動計算書 |
(2)会社法上の決算事務報告
1.残余財産の価額 | |||
---|---|---|---|
(1)収入の部 | |||
①債権の取立て | |||
②資産の処分 | |||
③その他 | |||
(2)支出の部 | |||
①債務の弁済 | |||
②清算費用 | |||
③租税公課 | |||
(3)解散日現在の現金預金 | |||
(4)残余財産 | 支払税金を控除している場合はその旨 | ||
2.一株当りの残余財産分配額 | 何が問題でいつごろ終了する見通しなのか | ||
(1)残余財産の価額 | |||
(2)発行済み株式総数 | 自己株式を除く | ||
(3)一株当り分配額 | |||
(4)分配を完了した日 |
事後的費用はあらかじめ払い出しておく
- 清算人の報酬
- 清算事務所の費用
- 残余財産分配のための通信費、送金費用
- 株主総会開催費用
- 清算結了に伴う登記費用
- 専門家(弁護士・会計士・税理士)の報酬
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